91 / 132
ごめん④
そしてこれを、恋愛感情だと認めてしまったら。
……いつか彼が僕に飽きて、その関係に終わりが来た時、僕は彼を完全に失う事になる。
そんなの僕は、きっと耐えられない。
だって遼河くんは僕にとって、もうそれくらい特別で。
……それくらい、大切な人になってしまっているから。
史織に失恋した時は、彼が側にいてくれた。
だけど恋人として付き合って、その後遼河くんの心がもしも僕から離れていってしまったら。
……その時僕はきっと、平気ではいられない。
「この前も、もう少しって言ったじゃん。
なるべく早く、答えを聞かせて。
……じゃないと嫉妬で、またお前をめちゃくちゃにしちゃいそうでこわいんだ」
弱々しく、震える声で言われた。
……なのに僕は、やっぱりこう答える事しか出来なかった。
「……ごめん。でもまだ、自分でもよく分からないから」
本当はこの感情の答えに気付きながら、僕は彼に嘘を吐いた。
すると遼河くんは、突然僕の首筋に舌を這わせた。
それに驚き、慌てて彼から身を離そうとしたのだけれど。
……逆に手首を引かれ、逃げられないよう強く抱き締められてしまった。
「よく、分からない?……本当に?」
じっと僕を見つめる、まるで肉食獣みたいな濃灰色の瞳。
すべてを見透かすようなその視線に堪えられず、思わず目を閉じた。
「まぁ、仕方がない……か。
とりあえずカラダはもう俺にベタ惚れみたいだし、どうせ時間の問題だろうから、あと少しだけ待っててやるよ」
ホント、なんて自信だよ?
だけど、その半分。……いや、百分の一でもその自信をわけて貰えたなら、僕ももう少し素直になれるのに。
そんな風に、ちょっとだけ彼の事を羨ましく感じていると、その隙に。
……彼の大きな手のひらが、僕の着ていたスウェットの裾からスルリと侵入してきて、脇腹の辺りをいやらしく撫でた。
ともだちにシェアしよう!