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ごめん④

 そしてこれを、恋愛感情だと認めてしまったら。  ……いつか彼が僕に飽きて、その関係に終わりが来た時、僕は彼を完全に失う事になる。  そんなの僕は、きっと耐えられない。  だって遼河くんは僕にとって、もうそれくらい特別で。  ……それくらい、大切な人になってしまっているから。  史織に失恋した時は、彼が側にいてくれた。  だけど恋人として付き合って、その後遼河くんの心がもしも僕から離れていってしまったら。  ……その時僕はきっと、平気ではいられない。 「この前も、もう少しって言ったじゃん。  なるべく早く、答えを聞かせて。  ……じゃないと嫉妬で、またお前をめちゃくちゃにしちゃいそうでこわいんだ」  弱々しく、震える声で言われた。  ……なのに僕は、やっぱりこう答える事しか出来なかった。 「……ごめん。でもまだ、自分でもよく分からないから」  本当はこの感情の答えに気付きながら、僕は彼に嘘を吐いた。  すると遼河くんは、突然僕の首筋に舌を這わせた。  それに驚き、慌てて彼から身を離そうとしたのだけれど。  ……逆に手首を引かれ、逃げられないよう強く抱き締められてしまった。 「よく、分からない?……本当に?」  じっと僕を見つめる、まるで肉食獣みたいな濃灰色の瞳。  すべてを見透かすようなその視線に堪えられず、思わず目を閉じた。 「まぁ、仕方がない……か。  とりあえずカラダはもう俺にベタ惚れみたいだし、どうせ時間の問題だろうから、あと少しだけ待っててやるよ」  ホント、なんて自信だよ?  だけど、その半分。……いや、百分の一でもその自信をわけて貰えたなら、僕ももう少し素直になれるのに。  そんな風に、ちょっとだけ彼の事を羨ましく感じていると、その隙に。  ……彼の大きな手のひらが、僕の着ていたスウェットの裾からスルリと侵入してきて、脇腹の辺りをいやらしく撫でた。

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