100 / 132

握らされた主導権②

 正直なところ、この後の事は何も考えてはいなかった。  だってこれまではいつだって彼が僕をリードし、導いてくれたから。  だけど僕がコンドームを着けてあげたせいで、なんだかおかしな事になってしまった……ような、気がする。 「どうすんの、って。……どうしたら、いい?」     途方に暮れて、じっと彼の顔を見つめた。  すると遼河くんはサディスティックな笑みを浮かべ、僕の下腹に卑猥に指を這わせた。 「大晴の、好きにしていいよ?」    彼との行為の最中、いつだって僕は受け身だった。  さっき素股をさせられた時も腰を振るように言われ、それに従いはしたけれど、主導権は常に彼にあった。  だからこんな風に、好きにしていいなどと言われたら、途端に困ってしまう。  なのにカラダの方は、もう限界だった。  ……彼が欲しくて、堪らない。  覚悟を決めて座る彼に跨がり、向き合った状態で自ら挿入の体勢をとった。 「いい子だね、大晴。  そのまま自分で、腰を落として……」  恍惚とした表情で、笑う彼。  僕はまるで魅せられたみたいにその言葉に従い、ゆっくりと腰を落としていった。 「下手くそ。そんなんじゃ、いつまで経っても逝けないぞ?  ほら、俺も手伝ってやるよ」  クスクスと笑いながら、腰に添えられた彼の手のひら。  そのままグイと下に強く引かれ、一気に一番奥を貫かれた。 「んっ......!」  自然と漏れた、喘ぎ声。  だけどそれ以上、彼は動いてはくれなくて。  ……中途半端に与えられた刺激が僕を狂わせ、壊した。  彼の上。自らの意思で腰を振り、夢中で快楽を貪る僕。  すると頭を撫でながら、彼はいつになく優しく笑ってくれた。  それがとても、嬉しくて。  ……僕も微笑んだまま、彼にキスを求めた。

ともだちにシェアしよう!