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江ノ島ドライブ④
***
ふたりでぶらぶらと街中を散策している途中で見付けた、一台のプリ機。
「大晴!一緒にプリ、撮ろうぜ」
満面の笑みを浮かべて言われたけれど、そんなのは高校生の頃ですらも撮った事がなかったというのに、30を過ぎた男がふたり、仲良く並んで撮るとか……。
ワクワクする気持ちが全くないワケではないのに、羞恥心が勝ち、素直にうんと答える事が出来ない。
すると彼は僕の返事を待たずに料金を投入したかと思うと勝手にコースやら背景やらを選び、それが終わると僕の手を引いて、強引に撮影ブースへと連れ込んだ。
そして始まった、プリクラの撮影会。
背後から僕を強く抱き締めたり、頬にキスをしたりといった行為を当たり前みたいにされ、心臓のドキドキが止まらない。
僕はいい年をした、アラサーの男だというのに。
「ほら、大晴。お前も、笑えって!」
こちょこちょと脇をくすぐられ、我慢出来ずに吹き出した。
それを見て彼の口角が、ニッと満足げに上がる。
撮影が終わると彼は、慣れた様子で落書き機能を使い、メイクやらスタンプやらで写真を彩っていった。
デカ目に加工されたふたりのプリクラは、もはや宇宙人みたいだ。
……こんな加工が可愛いと騒ぐ、今時の若い女の子達の気が知れない。
だけどあまりにも酷いその出来映えに思わず吹き出し、そのままお腹を抱えて爆笑した。
すると遼河くんはフッと小さく笑い、僕の頭にポンポンと優しく触れた。
「良かった。……やっとちゃんと、笑ってくれた」
その言葉に驚き、彼の方を見上げた。
彼には、ばれていたんだ。
……気持ちが沈み、本当の意味で笑えていなかったという事を。
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