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理不尽なお仕置き②

 それから彼は悠然と立ち上がり、僕を置いたまま部屋を出ていってしまった。  嫌な汗が、背中を伝う。  ひとり残された部屋に響くのはカチカチと時計の秒針が動く音と、バイブの無機質な振動音。  それから僕の、まるで獣みたいな浅く荒い息遣い。  終わりの見えない、お仕置き。  達するまでの感覚はどんどん短くなり、その境目すらも徐々に分からなくなっていった。  やっぱり僕が、悪かったんだろうか?  オモチャなんかで何度も逝ってしまうような、いやらしい僕が……。  彼が戻ってきたら、謝れば許してくれるのかな?  でも……許してくれなかったら?  情けなくて、苦しくて。  ……|穢《けが》れた僕はもう、彼に愛されていないのかもしれないと思うと、悲しくて。  次第に麻痺し始めた、思考。  汗と涙で、ずくずくに汚れた顔。  なのに気持ちいいのは、止まらなくて。  完全に何も考えられなくなった頃、バイブの電池が切れ、ようやく地獄のような快楽から逃れる事が出来た。  そして僕は、そのまま意識を失った。 ***  次に目を覚ました時、体を綺麗に清められた状態で、僕はベッドの上で遼河くんに強く抱き締められていた。  遼河くんがまた戻ってきた事が嬉しくて、僕は笑顔で彼に向かい手を伸ばし、当たり前みたいにキスを求めた。 「お帰りなさい、遼河くん。  良かった、帰ってきてくれた……」  なのにその手は、避けられて。  ……代わりに額に、軽く口付けられた。 「ごめん。こんな事、もう絶対にしねぇつもりだったのに」  さっきまでの乱暴な行為が嘘みたいに力なく、彼は僕の方を見ないまま言った。  だけど僕は、何も答える事が出来なくて。  ……ただ静かに、左右に首を振った。    だって君は、悪くない。  悪いのはこんな風に簡単に、気持ち良くなってしまう僕の方だと思うから。

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