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突然の別れ②
こうして彼は、もう僕の方を振り返る事すらないまま、部屋から出ていってしまった。
始まりと同じくらい、終わりも突然だった。
だけど僕は、やっぱりどうする事も出来なくて。
なのに涙も、流れない。
だってこの時の僕はまだ、大切な彼を本当に失ってしまったのだという現実を、受け止める事すら出来ないでいたから。
***
それからさらに、1ヶ月の時が過ぎた。
だけどやっぱり僕はいまだに、遼河くんを忘れる事が出来ないでいる。
でも考えてみたらあんなにも魅力的な人に、好きになって貰えた事の方が奇跡みたいなモノだったのだ。
なのにそれを、当たり前みたいに享受して。
……彼に愛の言葉を伝える事すらないまま終わった、僕の二度目の恋。
いつの間にか彼が側にいてくれるのが、当たり前になっていた自分。
だからこれはきっと、バチが当たったんだ。
……彼の気持ちの上に僕なんかが胡座をかき、甘え続けてきたバチが。
最初の一週間は、惰性だけで生きる事が出来た。
だけど二週間が、過ぎた頃。
……僕はようやく彼のいない生活を、寂しいと思うようになった。
そして、今の僕は。
……彼が自分の中でいかに大きな存在となっていたか、今さらながら思い知らされ、毎晩泣いて過ごしている。
いい年をした大人が失恋くらいで何をやっているんだと、自分でも思う。
なのに明かりのついていない家に帰り、一人になると、頭に浮かぶのは彼との、楽しかった思い出ばかり。
酷い目にもたくさん遭わされたし、何度も彼には泣かされてきたはずなのに。
でも愚かな僕でも、最近になりようやく認める事が出来た。
好きだと素直に伝える事は恐れて逃げた癖に、あんなオモチャですぐに気持ちよくなってしまうような身勝手で穢れた僕はやはり、彼に嫌われてしまったのだと。
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