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親友④

「うん。僕もそれは、思う」  あまりにも知之らしい、下らない発想ではあるものの、確かにその通りだなと感じた。  思わずプッと噴き出すと、知之は眉間に深いシワを寄せ、続けた。   「しかし大晴が絡んだ時の遼河は、お前が思うほど善人でもなけりゃ、大人でもないぞ?  ……ちょっと買い被り過ぎだと、俺は思うけど」  心底ゲンナリしたように、知之が言った。 「だってさ、普通友達相手に、『殺す』とか言う!?  俺割と、ガチでショックだったんだけど!!」  既にかなり時間が経つというのに、両手を頭で抱え、叫ぶ知之。  ……意外と繊細だし、根に持つタイプだよな。 「うーん……まぁ確かに、普通は言わないかもね。  でも彼、色々とぶっとんでるから……」  クスクスと笑いながら答えたら、知之は僕の鼻先に、人差し指の先を突き付けた。 「それだよ!それ!  アイツ基本、意外と常識人だぞ?  遼河が誰かに殺すとか言ってんの、血の気の多かった学生時代ですら聞いた事ねぇし。  色々とぶっとんでるのは、お前が絡んだ時だけ!」  ヒートアップしたらしき彼の声が、小さな居酒屋の店内に響く。  だから僕は慌てて彼の口元を手で押さえ、声を下げるように訴えた。 「落ち着け、知之!声、大きい!」  すると知之は、軽く息を吐き出した。  それから彼は声のトーンを少し下げ、いつになく真剣な表情で告げた。 「なぁ、大晴。  たぶんだけどアイツは器用なようでいて、実はかなり不器用な人間なんだと思う。  だからお前の側でしか、本当の意味での素の自分は出せないんじゃね?」

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