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誤解①

「うん。ホントごめんね、勝手に突然来て。  でもやっぱり、どうしても納得がいかなくて……」  彼の顔を見上げたまま、告げた。  しかしその真意が分からないのか、遼河くんはやはり戸惑ったように、ただ僕を見つめた。 「あのぉ……私もしかして、お邪魔だったりする?」  その時背後から、遼河くんのカノジョの声がした。  そこでちょっと冷静さを取り戻し、むしろ自分の方が邪魔をしてしまった事を謝罪しようとしたら、それよりも先に遼河くんが、キラキラとまばゆい笑みを浮かべて答えた。 「うん、邪魔。空気読んでくれて、ありがとう」 「……!?」  あまりにも酷いその発言に驚き、口を挟もうとしたのだけれど。  ……その人はプゥと愛らしくほっぺたを膨らませ、言った。 「ひっどーい!遼河、小さい頃はあんなに可愛かったのに。  お姉ちゃん、泣いちゃう!」  あれ……僕の、勘違いだったのだろうか?  彼には確か、兄しかいないのだと思い込んでいたけれど。  しかし遼河くんの発言により、そんな疑問はすぐにふっ飛んでしまった。 「ハッ!誰が、お姉ちゃんだよ?  ……この、変態クソ兄貴。ホント大概にしとけよ!!」   「へ……?」  またしても、変な声が出てしまった。 「アハハ。ごめん、ごめん。  けど自分の女装が何処まで通用するか、やっぱ気になるじゃん?」 「うるせぇよ!ったく……。  大晴。どうやら誤解しているようだから、ちゃんと説明しておく。  ……コイツは大変不本意ながら、俺の実の兄だ」  嘘だ、そんなはずはないと思い、その人の顔を凝視してみる。  すると彼女……もとい彼はカツラを取り、ニヤリと笑った。

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