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誤解②

「どうも、はじめまして!  遼河の兄の、|大河《たいが》です。  女装は新入社員との懇親会での、余興の最終確認。  そういった趣味はないけど、なかなかイケてたでしょ?」  あまりの衝撃展開に言葉を失くし、じっと顔を見つめた。  そんな困惑顔をした僕の事をクスクスと笑いながら見下ろしたまま、大河さんは僕の涙を優しくそっと指先で拭ってくれた。  そしてこの人のその笑顔は、言われてみたら、遼河くんにとてもよく似ている気がした。  あと至近距離だと、ほんのり髭が生えているのが分かる。  ……僕の涙、返して欲しい。  その時遼河くんが、不機嫌全開といった感じで笑顔のまま告げた。 「はぁ……無駄にクオリティ、高過ぎなんだよ。  そういうのは、多少不細工なくらいがちょうど良いんだよ。  だから大河がやっても、ぜんっぜん笑えないから。  他のネタ、考えた方がいんじゃね?  あとコイツに、勝手に触んな。……大晴が、穢れる」  大河さんから僕を引き離すみたいに、再び腕を強く引く遼河くん。  そのためバランスを失った僕は、すっぽりと彼の腕の中へと収まった。 「あぁ……やっぱり、そういう感じ?  遼河が自分の|家《テリトリー》を他人に教えた事なんて、これまでほとんど無かったから、そうかなとは思ってたけど」  ニマニマと感じの悪い笑顔を浮かべて言われ、一気に恥ずかしくなってしまった。  しかし真っ赤であろう顔は強く抱き締められて遼河くんの胸元に押し付けられ、隠された。 「悪いかよ?てかお前、こっち見んな!  大河なんかに見られたら、俺の可愛い大晴が減る!」  俺の、などと言われ、ますます恥ずかしくて顔が上げられなくなり、羞恥に震える僕。  そろりと眼球だけを動かして盗み見ると、大河さんは呆れたように笑っていた。

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