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好き①
本当は泊まる予定だったようなのだが、結局押し問答の末大河さんは、遼河くんに追い出されるようにして帰っていった。
女装姿のまま夜の町へと放り出された彼が多少気の毒ではあったが、本人はあまりそこは気にしていない様子だったので、申し訳ない気はするもののまぁ大丈夫だろう。
……たぶん。
そして残ったのは、僕と遼河くんのふたりだけ。
「とりあえず、入れば?」
再びキラキラまばゆい笑みを浮かべ、言われた。
正直こういう笑い方をする時の遼河くんは信用ならないし、ちょっとこわい。
だけどここで逃げたら、きっともうこんなチャンスは二度とない。
そう思ったから、ちょっとびびりながらではあったけれど、素直に彼の部屋に足を踏み入れた。
***
「で。……大晴は、なんで俺を訪ねて来てくれたの?」
ソファーに座る彼の膝の上、何故かお姫様みたいに横抱きに抱かれた状態で、いきなり触れられた核心。
……もう少しゆっくり切り出すつもりだったのに、本当に情け容赦無さ過ぎる。
「えっと……いきなり、終わりって言われて。
僕はちゃんと君に、気持ちすらも伝えられていなかったから」
すると遼河くんはスッと瞳を細め、ニッと口角をあげ微笑み続きを促した。
「うん。確かに、そうだな。
……で、それはいったい、どういう気持ち?」
くっ……!絶対こんなの、僕がどんな事を伝えたかったのか、全部分かってるじゃん!
それにさっきの口振りだと、関係を終わりにするとは言われたが、彼の気持ちがまだ僕にあるのは明白で。
……自分から勢い任せに告白をするぞと決めて来たはずなのに、なんとなく新手の嫌がらせをされているような気分になってきた。
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