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好き③

 彼の首元に手を回し、すりすりと頬に頬を擦り付ける。  すると遼河くんは、クスクスとくすぐったそうに笑った。 「それにしても。……まさかもう、他の女に現を抜かしてると思われるとはな。  しかも相手があの、クソ兄貴とか……」  恨みがましい口調で、言われた言葉。  だけどあんな状況で、しかもあんな美人が一人暮らしの彼の家にいたら、疑うなという方が無理な話だと思う。  ……が遼河くんは、そうは思ってはくれなかったようだ。 「だって僕は、男だし。  大河さん、すっごく綺麗だったし……」  ボソボソと、自分は悪くないと訴える。  でも遼河くんの不機嫌メーターが、どんどん上昇いくのを感じる。 「やっぱお前、何も分かってないんだな。  ……俺の気持ち、軽く見過ぎ」  今度は彼の指先が、僕の鼻をむぎゅっと摘まんだ。 「遼河くんの気持ちを、軽く見ているんじゃなくて。  ……僕は自分に自信が、持てないんだ」  素直に、伝えた。  すると遼河くんは僕の鼻先から指を離し、再び額をピンと弾いた。 「ホントお前、ネガティブだよな?  でも、なら、そうだなぁ……俺の事は、どんな人間だと思う?」  彼が、どんな人間かだって?  そんなの、決まってる。  格好良くて、仕事も出来て、家柄もいい。  その上料理まで上手な、完璧超人。  知之も話していたが、もしかしたら宇宙人なのかも知れないと感じてしまうほどに。 「……僕にはもったいないぐらい、素敵な人だと思う」  この質問に対しては、即答する事が出来た。  すると遼河くんは不機嫌そうに眉根を寄せ、言った。 「一言、余計なんだよ。  僕にはもったいないぐらい、とかは要らない」  ……やっぱりこの男、ちょっと面倒臭いかもしれない。

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