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「監督」 「浮かない顔だな」 リチャードの問いに壮馬は答えず、俯いてビールの缶に視線を落とす。質問に答えるつもりは無かったし、出来ればそっとしておいてほしかった。 だが彼は隣に腰を下ろすと持っていた袋から煙草を取り出し、口に銜えて火を付ける。どうやらこの場を去るつもりは無いらしい。 「……ショウタロウ絡みか?」 ふぅっと煙を吐きながらいきなり核心を突かれびくりと肩が震えた。 「前から気になっていたんだが、お前らってただの親友って感じじゃないよな」 「……っ」 「いつも一緒に行動してるし、親友って言うより寧ろ……」 「仲が良すぎるんじゃないかって、昔からよく言われます。でも、幼い頃からの知り合いなので気心が知れてるからそう見えるだけじゃないですか?」 それ以上追及されたくなくて、一気に早口で捲し立てると持っていた缶を握り締めた。僅かに残っていたビールを飲み干し立ち上がる。根掘り葉掘り聞かれるのは好きじゃない。 まして今は失恋した直後。これ以上詮索されたら立ち直れなくなってしまう。 「すみません監督。明日も早いので僕、もうそろそろ」 「なんだ、もう戻るのか? まだ宵の口じゃないか」 「いえ、でも……」 「それに、それっぽっちの酒じゃ飲み足りないだろう? 俺の部屋で飲み直そう」 なっ! と、青みがかった瞳でウィンクされ壮馬は断り切れずに渋々と頷いた。

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