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「わかっていたんです。こうなる事は」 「……」 「京極さんには奥さんも居るし、もうすぐ子供も生まれてくる。早く諦めなくちゃいけなかったのに、どうしてもそれが出来なくて……」 アルコールの効果も手伝って、一度口を吐いて出た言葉は堰を切ったようにどんどん溢れて来る。リチャードは一瞬驚いたような表情を見せたが、そっと壮馬の隣に戻って来ると黙って彼の話に耳を傾けた。 「京極さんはそんな僕の気持ちをわかってて、ずっと付き合ってくれていたけど流石にもう……」 壮馬は一旦そこで言葉を切った。手の中で半分ほど残ったビールがチャプンと音を立てて虚しく揺れる。 「僕がいけないんです。京極さんの優しさに甘えていたから」 自業自得なんですよ。と、呟いて残っていたビールをのどの奥に流し込んだ。ほろ苦さが体中に染みわたって涙が出そうになった。 「そうか、それは辛かったな」 「あ、でも大丈夫ですから。覚悟はしていたので」 「そんな面して何が大丈夫だ。無理するな」 同情されたくなかったので必死に笑顔を作ろうとしたのだが、厳しい声に一蹴されてしまった。 「だいたい、それはソウマだけのせいじゃないだろう? ショウタロウにだって非はあるはずだ。そんなに自分ばかりを責めるもんじゃない」 窘めるようにそう言って、リチャードは壮馬の肩をグッと自分の胸元に引き寄せた。洗いたてのシャツと煙草の香りが混じった男らしい匂いが鼻をくすぐりドキリと胸が高鳴る。

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