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ほのかに漂うアルコールと、リチャードが付ける香水の香りが混ざり合い、一歩距離を詰めるごとにそれは強くなって行く。 顔と顔が接近し、目が合って、改めてリチャードの顔がとても美しいと思った。スッと通った鼻筋や尖った顎はシャープでいかにも外国人と言った彫りの深さがある。まるで絵本の中から出て来た王子様のように整った容姿は見る者を魅了して止まない。それに加えて妙に男の匂い、と言うか色気のようなものが強くて、知らず胸が高鳴った。 「そ、そんなので忘れられるわけないじゃないですか」 「やってみなくちゃわからないだろ。大体、いつまでも終わった恋を引きずってもいい事なんて一つもないぞ」 壮馬の心はそんなに単純じゃない。ついさっきフラれたばかりと言っても、祥太郎への思いはまだ残っているというのに、他の男と寝るなんて出来ない。頭ではそう思っているのに体が勝手に反応し始めているから非常に困る。誰にでも足を開くような緩い男では無かったはずなのに。 「騙されたと思って試してみろ。人生の先輩の言う事は聞くもんだ。寂しさは人肌で埋めろって言うだろ?」 「埋まるはず無いじゃないですか」 「だから、騙されたと思って試してみろって」 クスッと笑いながら、リチャードは慣れた手付きで壮馬の服を一枚ずつ剝いでいく。 戸惑っているうちにシャツを首から引き抜かれあっという間に上半身を裸に剥かれた。 「ちょ、ちょっと待ってください! 僕、まだOKしてな……」 「往生際が悪いな。ここまで来て今更止めれる訳ないだろう」 そう言ってリチャードは自分の着ていた服をばさりと脱いだ。腰の手術で現役をリタイアして久しい彼の身体は、肉がたるんでいそうな気がしていたのに、思った以上にいい体つきをしている。 酒が好きでよく仲間内で飲みに行っていると言う噂は聞いていたが、その割には無駄な肉が少ない。厚みのある胸板や、程良く付いた筋肉。引き締まった腰回り。おそらく普段から鍛えているのだろう。全身から立ち上る男の色気に充てられて気分が高揚してゆくのを感じた。
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