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かわる景色  

結局、あの後二回求められ、集合場所へ着いたのは開始の五分前だった。 到着するなり祥太郎と目が合って、ぎこちない動きで彼がゆっくりと近づいて来る。 「よ、よぉ。いっつも一番に来るのにギリギリなんて珍しいじゃねぇか」 「あぁ、おはよう祥太郎君。ちょっと寝坊しちゃってさ」 たまにはこういう日もあるよ。と、苦笑しながらそう答えると、祥太郎は心底驚いた顔をした。 「なに? 僕、何かおかしなこと言ったかい?」 「いや……。なんでもねぇ」 少しホッとしたような祥太郎の表情に首を傾げていると、遅れてリチャードがやって来るのが見えてドキっとした。 平常心を保たなければ。邪念を振り払うように自分の頬を軽く叩き、先程までの濃密な時間を思い出してしまいそうになりながらも集合の合図で祥太朗とともに集まり、顔を上げる。 「えー、今日の予定だが……」 リチャードは昨夜の情熱的な姿なんて微塵も見せずに淡々と説明をしていく。 そんな彼にほっとすると同時に、やっぱりあれは夢だったのでは……という気がしてくるから不思議だ。 まぁ、それも当然と言えば当然かもしれない。なにしろ昨夜の出来事は、現実とは思えないくらい非現実的なものだったんだから。 ちらっとほんの一瞬だけ彼と目があった気がして、どくんと心臓が大きく跳ねる。 だがそれはすぐに目をそらされて、良かったような、少し寂しいような気持ちになったけれど、こんなことを思うこと自体どうかしていると思う。 「……以上だ。では各自、ウォーミングアップを始めてくれ」 「おい壮馬! 何やってんだ。ランニング始めんぞ」 祥太朗の声にハッとして慌てて周りを見てみれば既に仲間たちは走り始めている。 「ごめん!」 「どうしたんだよ。ぼんやりし過ぎじゃね?」 「そっかな……。そんな事無いと思うけど」 走りながら小さく溜め息をつく。本当にどうしてしまったのか自分にもわからないのだ。 ふと視線を感じてそちらを見ると、やはりリチャードがこちらを見ているような気がして、慌てて視線を前に向けた。 なんだか顔が熱い。 「…………」 「……どうかした? 翔太郎君」 「いや。別に」 複雑な表情を浮かべ、少しスピードを上げて前を走り出した彼の後ろ姿に首を傾げる。 もしかして、なにか変なものでも付いていたのだろうか? 見える範囲は一応確認したつもりだったが、なにか見落としていた? ふとそんなことが気になって一人でアワアワとしてしまう自分に困惑しつつ、壮馬は走るスピードを上げた。

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