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勝負の行方
翌日以降の試合は勝ったり負けたりと言った試合展開が続き、勝敗は最終戦にまでもつれこんだ。
現在、試合は同点。9回裏。既に2アウトを取っているものの、フォアボール3つとフルカウント。
ワンストライクからファールが続き、ツーアウトでランナーは1、3塁。
チャンスボールが来ればサヨナラのチャンスとなる場面だ。
まさかこんな大事な場面で自分の番が回って来るなんて……。
バッターボックスに立ち、呼吸を整える。自分が打てば勝利。アウトなら延長戦へともつれ込む。
此処の所ずっと登板続きだった祥太郎にはだいぶ無理をさせてしまっているから、此処で決めて彼が楽になれるようにしてやりたい。
ホームランじゃなくてもせめてヒットさえ打てれば……。
対峙する投手は左投げの選手で、キレのあるスライダーや精度の高いフォークを得意としている外村。
高校時代、祥太郎と共にチームを支えて春夏2大会連続甲子園優勝を決めたピッチャーの一人。
そして、祥太郎との関係を知る数少ない友人でもある。
出来れば、こんな大事な場面でこの男と対峙なんてしたく無かった。
勿論手を抜くつもりなんて無いが、高校三年間寝食を共にした元チームメイトは壮馬が苦手とするコースも勿論熟知している。
今までの対戦成績から見ても、あまり得意な投手とは言えない。むしろ、どちらかと言えば対戦したくない相手だ。
「壮! 思いっきり行け!!」
皆の声援に混じって祥太郎の声が耳に飛び込んで来る。
あぁ、本当だったらこの試合に勝って祥太郎と一緒に喜んで、そして……。
「ソウマ。何も心配要らない。悔いが残らないように思いっきり打って来い。結果を恐れるな。4番打者として恥ずかしくない最高のボールを打って来い!」
リチャードの言葉にハッとした。壮馬は振り返ることなくコクっと頷いた。
そうだ。自分の仕事をきっちりこなしてチームの勝利に貢献するのが自分に課せられた仕事だ。今は、ごちゃごちゃ考えずにこの一打に賭けないと――。
「行くぞ、一ノ瀬!」
「――っ!」
振りかぶった左脚をバネにして大きく踏み切り、渾身の力を込めて思い切りバットを振りぬく。
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