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勝負の行方 2
強い振動が手元に伝わり、小気味いい音を立てたボールが弧を描いて飛んでいく。
ぐんぐん伸びた打球はセンターの頭上を越えて一直線にスタンドへと向かっていき、そして――。
「は、はい……った……っ」
バックスクリーンにホームランとの表示が示され一瞬の静寂の後、地響きのような歓声が球場を包み込み、長い長い笛の音が鳴り響く。
「ハハッ、入った! やった!」
思わずガッツポーズをしながら悠々とホームベースを踏むと、待ち構えていた仲間達に取り囲まれて、ばかすか叩かれる。頭をぐしゃぐしゃにされながら彼の方を窺うと、外村はベースの上に膝をついてがっくりと項垂れていた。
「やったな壮。やっぱすげぇよお前!」
興奮気味に駆け寄って来た祥太郎に声を掛けられ、弾かれたように顔を上げた。おいでと言わんばかりに両手を広げてきたが、変わりに手の平を突き出して対応した。
なりふり構わず素直に彼の胸に飛び込んで行けるような間柄ではもうない。
祥太郎もハッとしたのか、少し困ったように眉を寄せた後、パンッと手の平を突き合わせる。
「何だ、お前ら喧嘩中か? いつものアレやらないのか?」
同僚の揶揄い交じりの声に、祥太郎はバツが悪そうに唇を尖らせながら「うっせー」と呟いた。
「……別に喧嘩とかそう言うわけじゃないんですが、そろそろ大人にならないといけないなって、話してたんですよ」
「ふぅん? ウチの名物だったのになぁ」
「そうそう、お前らが抱き合ってるのを見るの楽しみにしてるファンも多いってのに」
「別に今更、変える必要なくね?」
なんて口々にそう言われても困ってしまう。
「ま、まぁその辺はまた……。おいおい考えます」
「Hey! ソウマ! 中々やるじゃないか」
「監督……」
ぽんっと背中を叩かれて振り返るとリチャードが立っていた。
「あなたのおかげですよ」
そう言って少し照れくさそうに笑いながらはにかんでみせると、半ば強引に腕を引かれて、そのままぐわっと身体を持ち上げられた。
「わ、ちょ、ちょっと! な、何するんですか!」
慌てて手足をばたつかせると、チームメイト達の好奇の眼差しが降って来て同時に仲間達が壮馬の周りに集まって来る。
「なにって、ヒーローの胴上げだろ?」
「いや、そ、それは嬉しいですけど! 下ろして下さいってば!」
「何をいまさら照れる必要が? ほら、行くぞせーの!」
「うわわ……っ、ちょ、ちょっと……っ!」
いくら文句を言ってもリチャードは下ろす気が無いらしく、無数に伸びて来た手に抱え上げられ身体がポーンと宙に浮く。
そして、壮馬はそのままチームメイトやファン達の歓声と共に宙を舞った。何となくむず痒いような気持ちになり、無意識に笑みが零れた。
その後、みんなと共にリチャードの胴上げをして、恒例になっているシャンパン掛けを堪能し、お祭りムード漂う球場で勝利の美酒に酔いしれた。
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