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怒ってる……?
「――そう、か……。別れたのかお前らは」
色々なセレモニーが一通り終わった後、球場の入り口前で待っていた外村と合流。二人きりで話しをしたいと言うので人気のない所に移動して他愛もない話に花を咲かせていたのだが、そこで壮馬が別れを切り出した件を切り出すと、
外村は少し複雑そうな顔を見せた。
「お前らは何があっても離れないと思っていたのにな」
外村の言葉に思わず苦笑する。
「僕もですよ。僕だって……ずっとそう思ってました」
ザァッと少し強めの風が吹き、木々のざわめきが辺りに響き渡る。二人の間に
微妙な空気が流れて、どちらともなく口を噤んだ。
「じゃぁ、今はフリーなんだな?」
「えっ? あ……」
問われて一瞬、口籠る。咄嗟に浮かんできたリチャードの顔にドキリとし、壮馬は慌てて首を振ってそれを否定した。
何故、今彼が出てくるんだ。
「まぁ、そうですね」
動揺を隠そうとそっけなく答えた壮馬に、外村は何かを思いついたかのように悪戯っぽい笑みを浮かべながら身を寄せて来た。
「だったら一ノ瀬。一度試してみないか?」
「何を……ですか?」
何となく嫌な予感がして思わず後退ったが、それよりも先に腕を掴まれてそのまま引き寄せられてしまった。
「決まってるじゃないか。今好きな奴なんて居ないんだろ? なら俺とでも……」
「ちょ……っ! はぁ!?」
顎を掴まれて強引に上向かされる。慌てて両手で突っ撥ね離れようとしたその時。
背後から伸びてきた腕に強く引かれ、あっという間に外村から引き離されてし
まった。
「彼に触れるな」
背後から聞こえて来た低く重い声にハッと息を呑む。ふわりと漂って来たフレグランスの香りにドキリとさせられ、胸がざわついた。
振り向かなくてもわかる。こんな事をするのは、この男以外ありえない。
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