60 / 102
怒ってる? 14
「なんだ? したく無いんじゃなかったのか?」
憎たらしい位の笑みを浮かべて見下ろしてくるリチャードを、壮馬は恨めしそうに見上げる。
散々煽って焦らすだけ焦らして、あっさり退くなんて……。
(このサディストめ……っ)
リチャードは壮馬の隣に腰掛けると、壮馬の髪を優しく撫でてきた。
「ソウマが嫌がる事はしたくないからなぁ」
なんて嘯き、悪戯に耳を弄ってくる。壮馬はむっとして唇を尖らせた。
「……嫌がっているように見えました?」
「あぁ、凄くな」
「っ……」
(そんなわけないのに……っ)
本当はもっとして欲しいと思っているのに、そんな恥ずかしい事口に出したことが無いし、言えるわけがない。
壮馬は唇を噛み締めながらリチャードを睨み付けてやると、彼は楽しげに喉の奥で笑い、額に口付けを落としてきた。
「本当はわかってるくせに……っ」
「何の事かな?」
「~~~ッ」
いけしゃあしゃあと返され、壮馬は悔しさのあまり顔を背けた。どうして今日に限ってそんな意地悪な事ばかり言うんだ。
「もしかして、期待していたのか?」
「……ッ、ち、違いますっ」
「そう? なら仕方がないな。俺は自分の部屋に戻るとしよう。ソウマはこのまま寝てしまうといい」
そう言って部屋を出て行こうとするリチャードの袖を、壮馬はベッドから転がり落ちる勢いで掴んで引き止めた。
このままの状態で、寝れるわけがないじゃないか。
「……っ、本当に……意地悪ですね……っ」
ぎゅっと袖を掴んだまま、恨めしそうにリチャードを見上げると、振り返った彼が愉快そうに目を細めふっと口角を上げる。
ともだちにシェアしよう!