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伝わらない 2

「別に……何も」 「ふーん」 ふいっと顔を背けるとリチャードは面白くなさそうに鼻を鳴らして首筋に唇を押し当ててきた。そしてちゅっと吸いつかれる感覚の後、ピリッとした痛みが走って壮馬は堪らず眉根を寄せ身を捩って抗議する。 「ちょっ、なにするんですか……っ」 慌てて振り返ると、嫌味な位綺麗に整った顔がこちらを覗き込んでいた。 「ん? ちょっとしたマーキングかな」 「マーキングって、何言って……っ」 いっそ憎たらしいほどの笑顔で言われ、壮馬は言葉を詰まらせた。 この変態めっと心の中で悪態をついてリチャードを睨んだが、彼は全く堪えた様子もなく再び首筋に顔を埋めてくる。 「ちょっとっ、擽ったいですって……。そ、それに痕は……」 「大丈夫。見えるところには付けないよ」 「そ、そう言う問題じゃ……」 一体何が大丈夫なのかさっぱりわからない。 首筋に頬を擦り寄せられる度、ふわふわとしたブロンドヘアが触れて擽ったい。壮馬はぎゅっと目を閉じ、リチャードの悪戯に耐えるように枕の端を握りしめた。 すると、不意に首筋から唇が離れ、今度は項にちゅっと音を立てて口付けられる。 何度も何度も口付けられ、時折ちゅっと強く吸われると、ゾクゾクとした快感が全身に広がっていった。 (もう……っ) こんなの、まるで恋人同士の戯れみたいじゃないか。自分たちの関係はそんな甘い物じゃない筈だ。リチャードが自分に飽きたら簡単に終わってしまうような、そんな曖昧で脆い関係なのに……。 なのに、何故……。 なんで自分はこの手や唇を振り払えないのだろう。 恋人の真似事のような行為に心臓がどくんどくんと脈打っているのが分かる。 首筋に触れる吐息も、感じる体温も、擽ったいこの触れ合いも、何もかもが愛おしく感じてしまうなんて自分はきっとどうかしている。 「ソウマ……」 「ッ」 耳元で甘く囁かれ、壮馬は反射的にびくっと身体を揺らした。その声は反則だ。低く響くその声は壮馬の心を簡単に搔き乱してしまう。

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