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伝わらない 3

「ソウマ……」 「ッ」 耳元で甘く囁かれ、壮馬は反射的にびくっと身体を揺らした。その声は反則だ。低く響くその声は壮馬の心をざわつかせ、そして掻き乱していく。 こういう雰囲気はやっぱり苦手だ。どういう反応をしていいのか正解が分からないから。 コレが普通の恋人同士なら甘えたり、愛の言葉を囁いたりするのだろう。だが自分達はそんな関係ではない。 そもそも自分はリチャードにとって、単なる性欲処理の相手に過ぎない筈だ。 それに、連日こうして側にやって来るのは、一人になって考え込む時間を減らすためのリチャードなりの気遣いなのかもしれない。 リチャードがこうしていてくれるお陰で、寂しい夜を何度も経験せずに済んだし、何より思った以上に彼と普通に話すことが出来ている。 寂しさは人肌で埋めろと言う一見突拍子もないリチャードの主張も、今思えば間違いでは無かったのかもしれない。 祥太郎と別れた、悲しみや辛さ。やるせなさが癒えるにはもう少し時間が必要になって来るだろうが、リチャードと過ごしていると彼の事を考えている時間がぐっと減る。 何も考えられなくなるくらいになるのは、自分の体が作り替えられていくようで少々恐ろしい気もするが、もう少し心が落ち着くまでは、リチャードの胸に縋り付いていていたい。 壮馬は強張らせていた体から力を抜くと、おずおずとリチャードの大きな手に指を絡めた。 「……もう少し、このままでいいですか?」 リチャードは一瞬驚いたように目を丸くしたが、直ぐに破顔して壮馬の髪を優しく撫でながらふっと笑みを零す。 「それは……誘っているのか?」 「ち、違います! 変な勘違いしないで下さいっ!」 壮馬は顔を真っ赤にして否定した後、「……でも」と言葉を続けながら身体を反転させリチャードの胸にすりっと頬を寄せた。 「もう少しだけ、こうしていたいんです……」 消え入りそうな声でそう言うと、やっぱり気恥ずかしさが込み上げてきてリチャードの肩口にぐりぐりと頭を押しつけた。

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