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寂しい?
翌日からは、怒涛の日々が待っていた。
数々のテレビ番組出演に加えて、優勝パレードやスポンサーとの食事会など、息つく暇もなく年末いっぱいは昼も夜も関係なく、収録や雑誌、CMの撮影、インタビューなどに追われていた。
特に、ビジュアル受けが良く男女問わず人気の高い祥太郎と壮馬は個人としての契約やオファーが多く、分刻みのスケジュールで組まれた予定表は殆どが埋まっていた。
「たく、毎日毎日忙しいよなぁ……休む暇なしかよ」
「まぁ、仕方ないよ。最多投手セーブ賞と最多三振奪取投手賞のW受賞なんて凄い事をやってのけたんだから」
「それを言うならお前だって、三冠達成だろ? 可愛い顔して相変わらずやることがエグイねぇ」
一つの収録を終えた祥太郎と壮馬は、控え室で着替えを済ませた後、次の出番を待つ間一息ついていた。
野球のみの話だけなら、以前と変わらないように、いつも通りに接することが出来るようにまではなった。
だけどダメだ。野球以外の話になると、まだ少し気まずい。
特に幼馴染で親友だと周囲に公言して来たことが裏目に出て、バラエティの収録ではお互いのマル秘エピソードや、裏話などを求められたりして居心地の悪い思いをする事も多々ある。
「可愛いは余計だって何時も言ってるだろ?」
「わりぃ、わりぃ。そう怒るなって」
祥太郎にとってはもう終わったことになっているのか、それともただの馬鹿なのか。
彼からは謝罪の言葉一つなく、今日も今日とて揶揄われるようにポンポンと肩を叩かれる。
祥太郎にとって何でもない事でも、壮馬にとってそれは、触れられた箇所に熱がじんわりと広がるような、むず痒さを感じる。
彼が“可愛い”などと言う度に、もしかしたらまだ彼にも未練があるのでは? なんて馬鹿げたことを考えてしまいそうになる。
実際はそんなことなど全くなくて、次に出てくる言葉は大抵、つい先日生まれたばかりの愛娘へのデレデレな惚気話だったり、奥さんに対しての愛情表現についてだったりするのだから、いい加減勘弁して欲しい。
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