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寂しい 2

「壮も早く嫁貰ったらどうだ?」 なんて、呑気な顔して言われた時には、収録中であることも忘れて、危うく般若のような顔をしてしまいそうになった。 流石に他の出演者がいるのでなんとか堪えたが、心の中では苛立ちやら困惑やら羞恥やら、様々な感情が入り乱れていてざわついた心を落ち着かせるのに苦労した記憶が鮮明に残っている。 「……ほんっと、祥太郎君ってデリカシー無いよね……」 「ん? なんか言ったか?」 「別に……何でもない」 彼の中では自分との事は完全になかったことになっている事実に思わず深い溜息が洩れる。 何時までも引きずっているのは自分だと思い知らされて、その度に息苦しさに見舞われる。 そういう時は大抵、リチャードが慰めてくれるのだが、今日から彼はちょっと早めの正月休みだと言って故郷のアメリカへ帰ってしまっている。 (別に寂しいとか、思ってないし) 愚痴を聞いて貰える相手がいないことが残念で、ちょっとだけモヤモヤはするが、仕方がない。 リチャードが早く戻って来てくれれば、少しは気が紛れるかもしれないのに……。 なんて、考えてしまった自分が恥ずかしくて、壮馬はふるふると首を振って雑念を払う。 「壮馬、どうかしたか?」 「いや、別に……。大したことじゃないから気にしないで」 怪訝そうな顔をしている祥太郎に向かって、壮馬は何でも無いように作り笑いを浮かべて見せた。 ポーカーフェイスは昔からの得意技だ。 「あ、お二人とも、そろそろスタンバイお願いします」 「分かりました。今行きます」 コンコンとドアを叩く音に答え、壮馬はカバンを持ち直すと控え室を後にした。

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