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寂しい4

気になって振り向くと、何か勘付いたのか蛍がニマニマと笑みを浮かべながらこちらを見ている。 「何?」 「いや、別にぃ? ただ、お兄ちゃんって案外分かり易いなって」 「な、何だよいきなり……」 「何でもないよ。ただ、なんか恋する乙女みたいな顔してるなぁって思っただけ」 「はっ!?」 そう言って可笑しそうに笑う妹を見て、壮馬はカッと顔が熱くなるのを感じた。 「ち、違うからっ!? そんなんじゃ全然ないから!」 慌てて否定すればするほど、妹は面白がって顔を覗き込んで来る。 「別にそこまで否定しなくてもいいのに。お兄ちゃんだっていい年齢なんだから好きな人の一人や二人いてもおかしくないよねぇ。で? 相手はどんな人なの? 何処の局アナ?」 「だから違うってば」 野球選手=局アナとゴールインだなんて、安直過ぎるし失礼な話だ。 確かに高校時代にはそう言った話を聞いたこともあるが、それが自分にも適用されるとは限らないし、何よりそんな浮ついた話なんか一つも出ない。 「違うって言ってるだろ? 蛍には関係ないことなんだから放っておいてくれ」 「何よ、ケチ。ちょっとくらい教えてくれたっていいじゃない。お兄ちゃんのケチケチケチっ!」 蛍が身を乗り出しながら詰め寄って来てプウッと頬を膨らませた。 (これ、絶対に教えるまで離れないヤツだな……) 昔からそうだった。一度興味のあるものを見つけたら、意地でもそれを手に入れるまで諦めようとしない。 一体誰に似たんだろうと溜息を吐いた瞬間、手の中のスマホが震えた。ディスプレイを見るとそれは、先ほど電話してみようかと思っていた彼からだった。 ドキリとして一瞬出るのを躊躇ってしまう。

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