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寂しい 5
「出ないの? 鳴ってるけど」
「えっ、あっ、あーうん」
「……もしかして彼女?」
「ち、違うよ! 球団の監督っ」
「ええっ!? あのイケメン監督!?」
言ってしまってから、しまったと思った。キラキラと目を輝かせながら食いついてきた蛍は、壮馬が電話に出るのを期待の眼差しで見つめてくる。
鳴り続ける着信音と、蛍からのプレッシャーで頭が回らず、出ずに済む上手い言い訳が思いつかない。
監督だと言ってしまった手前、拒否し続けるのは余計な詮索を産みそうな気がして、壮馬は渋々電話に出た。
『hello、ソウマ』
耳に心地のいい柔らかな声を聴いた時、壮馬は無意識に蛍に背を向けていた。
「どうしたんですか? 何か連絡事項でもありましたか?」
『いや。そっちはもうすぐ日付が変わるだろう? 新年を一緒に祝いたくて』
「……ッ」
電話の向こう側で優しく微笑むリチャードの顔が思い浮かび、ドクンと心臓が跳ね上がる。
『ソウマ? 聞こえてるか?』
「聞こえてます。……その……随分暇みたいですね。そっちはまだ昼でしょう?」
『なんだ。そんな事か。別に照れなくてもいいじゃないか』
今の会話の何処に照れた要素があったと言うのか。
どれだけ脳内変換が激しいのかと思わずツッコミを入れたくなったが、蛍が居る手前それはやめておいた。
「で? 用件は何ですか?」
『いや、別に用なんて特にないが。ただ、ソウマの声が聞きたくなっただけさ』
「……馬鹿じゃないんですか?」
電話口で「フッ、相変わらず冷たいな」と笑いながら言うリチャードの声を聞きながら、壮馬は気まずそうに視線を逸らした。
その視線の先では蛍がジッと顔を覗き込んでおり、ギョッとして後ろに飛び退く。
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