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寂しい 7

『ソウマ、――……』 「ハッピー、ニューイヤー! おめでとうお兄ちゃん!」 「え……?」 画面いっぱいの新年を祝う映像と、蛍のハッピーニューイヤー! と言う掛け声とともに掻き消されてしまったリチャードの声。 「監督? 今、何か言いましたか?」 『ん? いや、別に大した事じゃない。今年もよろしくってだけだ』 「あ、あぁ……。なんだ。こちらこそよろしくお願いします。それじゃあ、また」 『ああ。また連絡するよ』 「そうですか、わかりました」 ブツリと電話が切れ、静寂が訪れる。 「……あの人、本当にカウントダウンしたかっただけだったのかな……? 」 0になった瞬間、ハッピーニューイヤー以外の言葉が聞こえたような気がしたのだが、気のせいだったのだろうか? 相変わらず、あの人の行動は読めない。 「じゃぁ、出かけてくるね! 明後日には戻ってくるつもりだから!」 「えっ、おい。日付変わったばかりだろ?」 「友達と初詣に行くって約束してるんだもん。家に居たらパパとママが怒るからお兄ちゃんの家に泊めて貰ったのわかるでしょう?」 やっぱり、ただの都合のいいホテル扱いじゃないか。そうツッコミを入れたいのを堪えながら、壮馬は溜息を吐く。 「パパとママには内緒にしててね」なんて言いながら手を差し出してきてお年玉迄要求してくる蛍のしたたかさに呆れてものも言えない。 仕方なく財布から数枚の諭吉を取り出して手渡すと、満足そうに笑って、蛍は足取り軽やかに出て行った。 「……はぁ」 嵐が去ったように一気に静かになってしまった我が家を見渡し、壮馬は疲れたような溜息を一つ漏らした。 折角の正月だし、初詣に行ってもいいが一人で行くのはやはり気が引ける。夜中の方が一般人に紛れやすいかもしれないが、わざわざ変装していくのも面倒に思え、テレビを消してごろりとベッドに横になった。明日、明後日と何をしようか……。蛍が来るからせっかくお節を頼んだのに。  一人ぼっちの正月はなんだか虚しい……。 (さっき監督が何か言いかけてた気がするんだけど……本当は何だったんだろう?) 直前に彼と電話した所為だろうか。なんだか無性に会いたい。声を聞きたい。 そんな気分になってしまい、壮馬は無意識のうちにスマホを手にしていた。 連絡先から彼の番号を出し、指を滑らせかけて慌ててその手を止める。 電話してどうするつもりだ? 別に何の用事もないのに、自分は一体何をしているのだろう? もういいや、今日は寝てしまおう。 普段何かと忙しい毎日を送っているんだ。寝てしまえば余計な事を考えなくて済む。 壮馬はスマホを枕元に置き、ゆっくりと目を閉じた。

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