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さびしい 9
羽田も成田も大きな空港なので、タイミングが悪ければ大変な事になる。
車を飛ばして空港まで辿り着き、急いでゲートに向かうと、リチャードはその一角にあるコーヒーショップでコーヒーを飲みながら若い綺麗めの女性たちと楽しそうに談笑しているところだった。
全く、正月早々人を呼び出しといてナンパしているなんて本当に何を考えてるんだ、あの人は……。
女に興味のない壮馬は女の媚びを見抜くことが出来る。 金髪碧眼のリチャードはただでさえ目立つ。 イケメン、高身長、高収入の三拍子そろった有名人と知り合いになれば、そこから他の選手たちと知り合えるチャンスがあるかもしれない。もしくは、リチャード自身を狙っているのか。
モデルにでもなれそうな美女たちに挟まれて、リチャードは天国に居るようなだらしない顔をしている。
その姿を見る限り、本人は多分何も考えていないのだろう。
もう、いっそこのまま帰ってしまおうか。 向こうから呼び出しておいてこの仕打ちは無いだろう。と、だらしないリチャードの姿に壮馬は若干の苛立ちを感じた。
イライラを滲ませながら睨みつけていると、こちらの視線に気づいたのか、リチャードがこちらに気付きスっと席を立った。
「すまない。レディ達。連れが来たみたいだから失礼……」
爽やかな笑顔でそう言い放ってこちらに向かって歩き始めたリチャードを追って女性たちの視線が壮馬に集まる。
「え……ツレって、一ノ瀬選手!?」
「嘘ッ! えっ、壮馬君!?」
一気にざわつく周囲に、もはや嫌な予感しかしない。
「ちょっと! なに堂々としてるんですかっ!」
「別に構わないだろう? 悪い事は何もしていないじゃないか」
「そうですけど……ッ」
これは文化の違いなのだろうか? あまり目立ちたくなくてわざわざ変装して来たのに、これじゃぁなんの意味も無いじゃないか。
「と、とにかく! 人が集まってくる前に行きますよ!」
「おいおい、折角久しぶりに会えたのに……」
「そう言うのは後でして下さい! ほら、早くっ!」
「全く、せっかちだなソウマは……」
そう言う問題じゃない。突発的とはいえ、集まって来たファンに囲まれて人だかりが出来ることほど面倒な事は無い。
それに、さっきみたいに女性に囲まれてニヤニヤしている彼を見るのは何となく面白くない。
「女性に囲まれたいのならお一人でどうぞ。僕は帰りますので」
つい先ほどの光景が脳裏に蘇り、何故かイラっと来て歩くペースが自然に早くなる。
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