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さびしい 12
「今度から、呼び出すときはいきなりじゃなくて、ちゃんと前もって言ってください。今日僕に何か用事があったらどうするつもりだったんですか」
「その時はもちろん、ソウマの都合を優先させるさ。だが、今までのソウマの交友関係から見ても、君は大勢でいるより一人を好む傾向にあるようだから、来てくれると思っていたよ」
「……」
本当に、腹が立つくらいに鋭い男だ。
確かに、壮馬は人見知りをするタイプなので、大勢で騒ぐことは得意ではないし、どちらかと言えば一人でいる方が好きだ。けど、それを誰かに見抜かれた事は今まで無かったので少し驚いた。
「……まぁ、否定はしませんが……」
「だろう? だから、問題ないと思ったんだよ。俺はソウマと二人きりで過ごしたいと思っただけさ」
「だからってわざわざ飛行機に飛び乗って来なくたって……」
「ソウマに会えなくて寂しかったんだ。だから、どうしても会いたくなった」
「……」
そう言う言い方をされれば壮馬は何も言えなくなってしまう。どのみち、あと数日もすれば戻って来る予定だったんじゃないのか? とか、他のヤツにもそうやって口説いているんじゃないのか?とか、いろいろと言ってやりたいのに。
たった数日も我慢できない程会いたかった。だなんて、そんなの、反則だ。
本当にずるい男だ。
言い返せない自分がなんだか悔しくて、壮馬はアクセルを踏み込む。
車はどんどん加速していき、あっという間に空港から遠ざかった。
突如変わったスピード感に驚いたのか、リチャードは一瞬驚いたように壮馬を見やり、フッと僅かに口角を上げて笑うと再び窓の外へと視線を戻した。
壮馬は赤くなっているであろう顔を少しでも誤魔化そうと、咳払いをして自宅へと向かい車を走らせていく。
初詣へ向かう渋滞の列を抜け、初売りで賑わっている街を過ぎ、車は閑静な住宅街に入って行く。
その間、会話らしい会話もなく、ゆったりとしたバラードが静かな車内に響いている。誰かといてこんなに話さないのも珍しい。でも、けっして気まずい空気じゃない。
リチャードの無茶ぶりには思うところがあるけれど、こんな時間もたまにはいいかと壮馬は肩の力を抜いた。
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