78 / 102

さびしい 13

「――監督。着きました」 一人暮らしをしている自宅マンションの地下駐車場に車を停めると、荷物を持ってリチャードと共にエレベーターへと乗り込み、自分の部屋の階へと向う。 壮馬の家は汐留駅からほど近いタワーマンションで、その最上階に居を構えている。 都内でも屈指のセキュリティの高さを誇っており、エントランスのオートロックを始め、エントランスやエレベーター内に防犯カメラが設置されており著名人も多く住んでいると専らのうわさだ。 ドームまでのアクセスが良く、交通の便がいい割には安かったので1LDKの部屋を2年ほど前に購入した。結婚する予定のない壮馬には充分すぎるほどの広さだ。 都心で交通の便も良い高級マンションで暮らし、広々としたリビングやくつろげる寝室。使いやすいアイランド型のキッチンや使い勝手の良いバスルームなどでゆったりと悠々自適な生活を送っている。 よくよく考えてみれば、蛍と祥太郎以外を家に招き入れたことが無い。気心知れている二人ならともかく、全くの赤の他人を自分のテリトリーに入れるなんて今までなら考えられなかった。 ちゃんと掃除してたよな? 洗面台を蛍が散らかしたりしていなかっただろうか? 最上階までの登りエレベーターの中で、今更ながらに不安を覚え始める。 「ち、ちょっとだけ待ってて貰えませんか? あの、掃除してないかもしれないので……」 「別に俺は構わんが?」 「僕が構うんですって!」 「そんなに慌てるなんて……見られて困るものでも? あぁ、もしかして、ディルドか」 「でぃ……っち、違いますからっ!!」 なにを言い出すんだ、この男はっ!! あまりにも頓珍漢な勘違いに、壮馬は顔から火が出そうになる程、ぼっと顔を赤くさせた。 この男の頭の中はどうなっているのか。 もしかして、わざとやっているのか?正月早々反応を見て楽しんでいるのか? だとしたら、とことん性格の悪い男だ。 そろそろ本気で怒っても許されるんじゃないか? 怒りに任せて彼を突き放そうとした時、エレベーターの到着音が響き扉が開いた。

ともだちにシェアしよう!