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寂しい? 21
「監督は……」
「ん?」
「一体僕の何がいいんですか?」
自分なんて、素直じゃないし、可愛げだって持ち合わせていない。祥太郎には腹黒いだのなんだのと散々言われて来た。メディアに散々持て囃されて出来上がった偶像は本当の自分じゃない。
そんな事、リチャードが一番良くわかっているはずなのに。
「そうだな……」
壮馬の問いに対して彼は少し考えた後、何故か嬉しそうに笑った。
「全部だな」
「な、何言って……」
「意地っ張りな所も、甘えるのが下手くそな所も、弱いくせに強がる部分も……、人一倍影で努力している姿にも好感が持てるし、何よりそれをひけらかさないのがいい。気を遣い過ぎるところとか、あと時々見せる素直な所とかも……あと、ベッドの上の――……」
「も、もういいです!」
まだあるのか。
聞いているだけで恥ずかしくて死にそうだ。顔から火が吹き出るのではないかと思えるほど熱くなる顔を手で覆いながらリチャードの言葉を遮った。
これ以上聞いていたら心臓が持たない。
「そうか?……残念だな。まだまだ言い足りないのに」
「もう充分ですって! 聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる……」
「フフッ、ならもっと言ってやろうか?」
「勘弁して下さい……」
リチャードは可笑しそうに笑うと、後ろからぎゅっと抱きしめ、壮馬の肩口に顔を埋めた。
「ソウマ……」
耳元で甘く囁かれ、ゾクリと背筋が震える。
「俺がどれだけソウマを愛しているか、まだわからないか?」
「……」
「お前の全てが愛おしいんだ。誰にも渡したくない」
「っ……ぁ」
低く掠れたセクシーな声。鼓膜に直接響くその声に壮馬は身体を小さく震わせ、小さく喘いだ。
「んっ……」
ちゅっと音を立てて首筋を吸われ、肩が跳ねる。リチャードは壮馬の頬を両手で挟み込むとそっと自分の方に向かせた。
「ソウマ……」
熱っぽい声で名を呼ばれ、顔が近づいてくる。キスされると思い、反射的に目を瞑ると鼻先にちゅ、と口づけられた。
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