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小さな嫉妬心 2
なんだろう凄くモヤモヤして、苛々する。
「おや。ソウマ起きたのか? 随分疲れていたみたいだな」
「……起きたのなら僕も起こしてくれればよかったのに」
「あまりにも気持ちよさそうな顔をしていたから、起こすのは忍びなかったんだ」
まるで悪びれた風でもなくそう言った後、おいでと手招きされてイライラを誤魔化すように営業スマイルを顔に張り付かせたまま蛍の横に腰を下ろした。
「お、お兄ちゃん? なに? どうしたの? もしかして機嫌悪い?」
「別に怒ってないけど」
蛍は珍しい物を見たとばかりに目を丸くし、若干引き気味で尋ねて来たがそれに素っ気なく答える。
別に怒っているわけではない。ただ、二人が談笑しているのが何となく面白くないだけだ。
「ホタルはソウマに似てキュートだな。思わず見惚れてしまったよ」
「……僕の妹を口説くのは止めて貰えます?」
リップサービスだとわかっていても、彼にそう言われるのは酷く面白くない。
蛍は「そんなんじゃないから!」と否定していたが、どことなく満更でも無さそうだった。
それがますます気に入らなくてチラリと蛍を一瞥するとリチャードに向き直ってにこりと微笑んだ。
「そう言えば監督はいつ戻るんですか? 僕の家が見たかっただけならもう充分でしょう?」
つい棘のある言い方をしてしまい、すぐにしまったと後悔する。
これではリチャードを邪険に扱っているように取られかねない。別にそんなつもりはないのだが、なんだか嫉妬丸出しのただの子供みたいで恥ずかしい。
しかし、当のリチャードは特に気に留めた様子は無く、大げさな動きで額に手を当てた。
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