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小さな嫉妬心 5

「ソウマは料理が上手いんだな。俺の嫁に欲しい位だ」 「嫁、ですか? ハハッ監督の嫁なんてお断りですよ。女性問題で苦労しそうだし」 出来ればもう、女性も愛せるような相手との恋愛はしたくない。 「即答か? 酷いな」 「当然です」 壮馬はそう言うと、空になった食器を持って立ち上がりキッチンへと向かう。 「女性問題って言うけど、俺はそこまで節操なしじゃないぞ」 椅子に座り、キッチンで洗い物をしている壮馬を眺めながらリチャードが不満そうな声を上げた。好きでも無い男と寝る事が出来るのだから、十分節操なしじゃないか。と言いたいところだが、それを言ってしまえば自分も節操なしだと認めてしまう事になるので敢えて口には出さなかった。 そんな壮馬の態度が気に入らなかったのか、リチャードは近くまでやってきてわざと不貞腐れたような顔をしてするりと腰に腕を巻き付けて来る。その表情が妙に子供っぽくて、壮馬は思わず笑ってしまう。 「いいと思うんだがなぁ」 「まだ言ってるんですか?」 「ソウマと離れてから、ずっと何か物足りなくてな。何をやっても気分が乗らないし、ダチと飲んでもちっとも面白くない。知らない間にソウマが隣にいるのが当たり前みたいになっていたんだなと改めて気付かされたんだ」 「なんだかそれ、告白してるみたいに聞こえますよ」 苦笑しながら、壮馬は洗い物の手を止めて彼をチラリと見た。リチャードは笑いながら壮馬に頬を寄せてくる。 「みたい。じゃなくて告白してるんだ」 チュッと頬にキスされて、触れた部分が熱を帯びて火照り出す。こんな雰囲気はどうも苦手でどうしたらいいのかわからなくなってしまう。

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