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小さな嫉妬心 6
「ソウマは、俺の事好きだろ?」
「しつこいですって。まぁ、好きでも無ければこんなに貴方と寝てませんよ」
「ま、セックスが好きだもんなぁソウマは」
「なっ!? 違います! それは僕じゃなくて監督の方でしょう!?」
ムキなって睨みつけたら、してやったりな表情のリチャードと目が合って顔を寄せて来たので慌てて顔を背けた。
不意打ちはもう食わない。そんな壮馬を見てリチャードはフッと笑みを零すとゆっくりと耳たぶに唇を寄せて来る。
「――っ、馬鹿な事してないで退いて下さい。テーブルが片付かないじゃないですか」
「そんなの後でも出来るだろ? 今しないと死ぬわけじゃないんだ」
「確かに死にはしませんが気分の問題です」
壮馬はピシャリと言ってのけるとリチャードを押し退け布巾を持ってテーブルに向かう。そこでふと、置きっぱなしになっていたスマホに着信を告げるランプが点灯している事に気が付いた。
一体誰からだろう? 不思議に思いつつディスプレイを表示させて思わず絶句。
『――愛し合う二人の邪魔をしちゃ悪いので、しばらく戻りません――』
それだけ書かれた文章と共に添付されていたのは、穏やかな表情をして眠る壮馬の頭を愛しそうに撫でるリチャードの姿。
「!?」
「どうかしたのか? あぁ、そう言えばさっき撮ってくれていたな。忘れていたよ。 よく撮れてるじゃないか。俺にも後で転送しといてくれ」
「……っ」
ひょっこりと顔を覗かせたリチャードの言葉に、思わずスマホをへし折りそうになってしまう。
「……監督」
「なんだ?」
「前言撤回します。僕は貴方の事なんて好きじゃありませんから!!」
正月早々、静かな室内に壮馬の大声が響くのだった。
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