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「そういう理由ならば仕方がないな」  ジェイドは用意された菓子に手を付ける。  それを一口で頬張る。  ……諦めたか?  元々、アルフレッドに会おうと思っていなかった可能性もある。  ……それとも、試しているつもりなのか。  外に出る機会がほとんどなく、伯爵邸内で過ごしているレオナルドと交渉をするつもりがない可能性もある。 「レオナルド」  ジェイドは愛おしい人の名を口にするかのようにレオナルドの名を呼ぶ。 「手紙は見たか?」 「はい。読ませていただきました」  交渉の場であると知らなければ、この場にいるわけがないだろう。  事前情報を収集する為には手紙は必ず目を通している。そのことを知っていながらもジェイドはわざとらしく問いかけた。 「手紙で書いたことは事実だ。随分と常識のない男に育てたものだな」  ジェイドは笑った。  挑発をしているつもりなのだろうか。 「一度、その顔を見てやろうと思ったんだ。侯爵家を敵に回そうとするバカの顔を見れば、少しは気が晴れると思ってな」  ……婚約者を酒場に向かわせた張本人がよく言う。  伯爵家と懇意にしている情報屋に問い合わせれば、すぐに事の真相が明らかになった。それを口にしないのは相手の思い通りに進めない為だ。  ……最初から嵌められていた。  アルフレッドは利用されたのだろう。  しかし、目的がわからないままだった。 「まあいいさ。顔を見たところで気分は良くならないだろうからな」  ジェイドはそう言い切ると用意された紅茶を飲む。  ……なにを企んでいるのだろうか。  侯爵家の長男として、それなりの教育が施されてきたのだろう。  伯爵家を継ぐことになる兄のセドリックを補佐する為に教育をされてきたはずのレオナルドでも、相手がなにを企んでいるのか、読み取れなかった。 「本題に入りましょう」  強引に話の流れを変える。  それに対して抵抗をする素振りすら見せなかった。ジェイドにとって、婚約者を寝取られたことに関する話は雑談でしかなかったのだろう。

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