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01-6.
「手紙には、伯爵家が条件を飲めば、和解に応じてくださると書かれておりましたが、その条件について詳しく聞かせていただけませんか?」
必要以上に時間をかけるわけにはいかなかった。
問題を引き起こしたアルフレッドが暴走をしないとも限らない。万が一の事態が起こる前に対談を終わらせ、和解させなくてはならない。
「伯爵に話を付けようと思ったんだが」
ジェイドはティーカップを机に置き、レオナルドを下から上まで観察をする。
視線を向けられていることには変わりはないはずなのだが、なぜか、寒気がした。全身を舐められるかのような、いやらしい視線を向けられたのは生まれて初めての経験だった。
「レオナルドでも問題はないだろう」
……やはり、伯爵領に関することか?
直接、伯爵に話を付けようとしていたことを考えると伯爵領の利権に関わることだろうか。それならば、今回に限り、多くの権限が委ねられているレオナルドでも対応することができるだろう。
「俺はアルフレッドに婚約者の純潔を奪われ、恥をかかされた。それだけならば、目を瞑ってやっても良かったが、婚約者の腹には三か月の赤子がいる。アルフレッドの子だそうだ」
ジェイドの言葉に対し、レオナルドは何も言えなかった。
「初めて身体の関係を持ったのは四か月前だったかな。その間、何度も身体の関係を持ったと明かされた時には何も言えなかった」
……あのバカ。
二歳下の弟、アルフレッドは二十歳になったばかりで浮かれていたのだろう。
職場である騎士団の仲間たちと飲み屋を渡り歩き、酔った挙句、意気投合をした相手と身体の関係を持った。その相手こそがジェイドの元婚約者だ。
……なんてことをしてくれるんだ。
その後も何度も身体の関係を持ち、相手に子どもができたと発覚したのは三日前ことだった。
……相手が妊娠しているなんて聞いていなかった。
「侯爵家に恥をかかせたんだ。当然、責任を取ってもらわなくてはならない」
「もちろんです。慰謝料を払わせていただきます」
レオナルドの言葉は想定内だったのだろう。
わざとらしく大きなため息を零したジェイドは、首を横に振った。
「金で解決するような問題なら、わざわざ伯爵家に来ない」
それはそうだろう。
金銭で解決をするのならば、手紙にそのことを明記するはずだ。
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