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03-2.
「それなら、週に一回ならいいだろ?」
……そんなに会いたいものなのか?
必要最低限の交流しかしてこなかったレオナルドには、ジェイドの切実な声が理解できなかった。
「……はぁ、わかった。用事がなければな。俺も暇ではないんだ」
ここで引かなければ、ジェイドはレオナルドを離そうとしないだろう。
そのように判断をしたレオナルドの言葉を聞き、ジェイドは嬉しそうな表情を浮かべた。それから思いっきり抱きしめる。
「止めろ! 潰れる!!」
体格差もある。なにより日頃から身体を鍛えているジェイドと伯爵邸に籠りながら書類仕事や研究に没頭をしているレオナルドでは力の差が大きすぎる。
ジェイドは慌ててレオナルドを離した。
それから上から下までしっかりと確認をする。
「……なんだよ」
その視線に対してレオナルドは不服そうな顔をした。
「いや、小さいなと思って」
ジェイドは思ったことをそのまま口にしただけだろう。
「は?」
それに対してレオナルドは我慢できないと言わんばかりに、ジェイドの襟元を掴む。
「訂正しろ。俺は小さくない」
頭一つ分の身長差はある。
だが、極端に体格差があるわけではない。
「おい、聞いてるのか?」
ジェイドと目が合っているのにもかかわらず、返事がない。
……無視か?
何を考えているのだろうか。
……興味がなくなったか?
期待をしてしまう。
求められたことに応じて、誠意ある対応はしたのだ。
仮にジェイドの興味が失せたという理由で婚約そのものがなかったことになったとしても、伯爵家が損をすることはない。
……また、兄上の言いつけを守るだけの日常に戻るのか。
理不尽な条件を叩きつけられたと思っているのは事実だ。十年前に一度会ったことがあると発覚しても、覚えていなければ意味がない。
十年前を含めても三日しか会ったことがないことには変わらない。
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