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01-2.
「返信は早くても問題はないでしょう。なにより、坊ちゃまも手紙を楽しみになさっていることが相手に伝わると思いますよ」
……そういうものなのだろうか。
レオナルドはジェームズに促されるまま、万年筆を手に取った。
……不思議なものだ。
返事は決まっている。
言葉に詰まることもなく、筆を走らせる。
……最低な屑野郎だと知っているのに。
好意を抱いているわけではない。
ただ、もう少し、ジェイドのことを知りたいと思っていた。
「……変なところがないか、見直してくれないか?」
あっという間に便箋を埋め尽くした文章を見返しながら、レオナルドはジェームズに甘えるように視線を向けた。
「坊ちゃま」
それに対してジェームズは優しく微笑む。
「婚約者様に送られる手紙の内容を確認させる必要はございません」
ジェームズはレオナルドが三歳の頃から世話を焼いている。
「坊ちゃまは、両家の為の婚約とはいえ、お相手を不愉快にさせるようなことをお書きになるような方ではないことをジェームズが誰よりも存じ上げておりますよ」
当主であるトムや伯爵家の嫡男であるセドリックの側近になることを望む執事やメイドたちが多い中、ジェームズは昇進を断り続けて、レオナルドの傍に居続けている。
「それでも、ご不安になることがおありでしたら、お話しくださいませ。ジェームズでよろしいのならば、いくらでも、ご相談に乗らせていただきます」
ジェームズはゆったりとした口調で言った。
その言葉を聞き、レオナルドは安心をしたように表情を和らげた。
「ありがとう。ジェームズ」
便箋を封筒の中に入れる。
伯爵家が用意した封筒は無地のものだ。
封はまだしない。思わず書いてしまった内容のまま、手紙を送っていいものか、まだ決めかねていた。
「その、だな。……三日後、休みが取れそうらしいんだ」
少々、言いにくそうに話し出す。
「しかも、伯爵領から十年ほど出ていないことを気にかけてくれているんだ」
視線を送られてきた手紙に落とす。
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