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01-3.

 強引で上から目線の発言が多いジェイドの字は見本のように綺麗だ。  少々癖のある字を書くレオナルドは、今度、綺麗な文字を書く為の見本にするのだと自分自身に言い訳をしながら手紙を宝物のように箱に仕舞い、時々、読み返している。 「……デッ、デートをしようと、誘われたんだ」  声にすると恥ずかしくなる。  一週間前、婚約をすると返事をした時に今度はデートをしようと言われていたものの、実際に誘いを受けてしまうと急に恥ずかしくなったのだろう。 「デートに行ってみたいと書いてしまった」  両手で顔を隠す。  頬が燃えているかのように熱かった。 「どうしよう。ジェームズ。まるで小説の中に出てくる恋人のようなやり取りをしているようだと思ってしまったら、なんだか、とても恥ずかしくて仕方がないんだ」  レオナルドの言葉に対し、ジェームズは笑顔のままで聞いていた。  それは他の執事やメイドたちがレオナルドに対して向ける同情心による笑顔ではなく、心の底からレオナルドの反応を喜んでいるものだった。 「婚約者様とお会いになられることを幸せだと感じられるのは、大変、喜ばしいことでございます」  ジェームズはレオナルドの予定が書かれている手帳を懐から取り出す。 「三日後でございますね。予定の調節はお任せくださいませ」 「……頼むよ。すっかり、忘れていた」 「問題ございません。その為のジェームズでございます」  ジェームズは手帳に書き込んでいく。  最低でも一か月先の予定が書きこまれているレオナルド専用の手帳には、仕事を始めると休憩も取らずに集中してしまうレオナルドの身体を気遣う内容も書かれている。 「坊ちゃま。手紙の封をなさりましたら、早急に送ってしまわれるべきであると進言させていただきます」  ジェームズの言葉にレオナルドは頷いた。 「そうだな。……これを転送魔法で送ってくれ」  封筒にしまい、封をする。  冷静な対応をするジェームズと話をすることで少しだけ冷静になれたのだろう。執事たちが出入りする部屋の中に組み込まれている手紙や小箱などの軽いものに限定はするものの、数時間以内に相手に届けることができる転移魔方陣の仕組みを思い出し、レオナルドは手紙をジェームズに渡した。

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