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01-10.

「アル?」  レオナルドは心配そうに呼びかける。  それに対してアルフレッドは項垂れた。 「知らなかったのか?」  カルミア伯爵家を脅迫する材料の一つとして妊娠していると打ち明けることさえもできなかったのか。それとも、妊娠そのものが嘘であるのか。  自身の腹に手を当てたままの姿勢で項垂れているアルフレッドの様子を見る限りでは、彼がレオナルドに対して嘘を吐いていないのは確かだろう。 「詳しいことは話せるようになってから教えてくれよ」  レオナルドはアルフレッドの頭を撫ぜた。 「材料が揃い次第、避妊薬を作っておこう。他に必要なものはないか?」  後悔をしている弟を追い詰めるような真似はしたくなかった。  そうやって甘やかしてしまうからこそ、世間知らずだと言われてしまうのだろう。その自覚はあったものの、打ち明けられない事情を抱えて項垂れているアルフレッドを目の前にして厳しい言葉をかけられなかった。 「ありがとう、レオ兄さん」  アルフレッドは顔を上げようとしなかった。 「妊娠ってどうやってわかるのか、知ってる?」  事情をすべて明るみにしないのは脅迫を受けているからなのか。  それとも、伯爵邸から離れることがほとんどない世間知らずのレオナルドに性的な事情を聞かせるわけにはいかないと思っているからだろうか。 「医者に診せればいい」  レオナルドの答えは簡単なものだった。  一般的に知られている方法だ。 「……もしも、妊娠してたらどうすればいい?」  アルフレッドの声は暗い。  冗談で言っているわけではないようだ。  ……変だな。  それは相手が妊娠をするわけがないと知っているかのようだった。  ……相手が妊娠をする条件を満たしていないのか?  チューベローズ子爵家の家系図を確認しておくべきだった。  ……いや、相手が女性であるとは限らないじゃないか。  サザンクロス侯爵家の怒りを買ったということに重点を置きすぎていた。  ジェイドの元婚約者が妊娠をしたという相手側の主張を信じ、元婚約者の素性を調べていなかったことを思い出す。

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