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02-1.
「よくも顔を出せたものだな」
レオナルドの質問に対し、露骨なまでに肩を揺らして明後日の方向に視線を向けた仕草が、相手が誰であるのかを言っているのも同然だった。
「アルが会いに行く必要はない」
ジェイドが提案した条件を受け入れたことにより、アルフレッドが脅迫を受け続ける理由もなくなったと考えても問題はないだろう。
「問題はすべて揉み消せばいい」
……アルを脅しに来たのか。
公になってしまっては騒ぎになるのはチューベローズ子爵家も理解をしているはずだ。
「安心しろ。兄さんが子爵家に二度と脅迫などとできないようにしてやるからな」
……自ら乗り込んでくるとは頭が足りない相手だ。
本来、子爵家が伯爵家に対して事前の通達もなく訪れることは許さない。
それなのにもかかかわらず、チューベローズ子爵家のクリスティーンと名乗る人物が連絡もなく訪ねてきたのは異例だった。
恐らく、先週まで侯爵家の後ろ盾があったからこそできた行為である。
しかし、今はその後ろ盾もない。
「大丈夫だ。心配はいらない」
婚約を結んでいない相手のことをいつまでも保護しようとする家ではないことは、伯爵領内に引きこもっているレオナルドでも知っている。
……ずいぶんと舐められたものだな!
それならば、アルフレッドがいつまでも脅迫に屈する必要はない。
「なにか証拠を握られているのならば、それを処分させるだけの話だ」
レオナルドは本気だった。
それがアルフレッドにも伝わったのだろう。アルフレッドは掴まれている腕を振り払って、困ったように眉を下げてレオナルドを見下ろした。
「……兄さん」
心配をかけるようなことを散々口にした自覚はあるのだろう。
「その、クリスは――」
「心配はいらない。俺が話を付けてやろう」
レオナルドは立ち上がる。
「いや、だから、その……」
小さな声で言い訳をしているアルフレッドの言葉に耳を貸すこともせずに、控えているジェームズに対して視線を向けた。
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