46 / 155
02-3.
最低限のものは寮に置いてあると断言するアルフレッドであるが、いざとなると欲しいものを要求してくることになると判断をしたのだろう。
「でも、セド兄さんが帰ったらまた家から通うから!」
アルフレッドは、馬車を使っても片道一時間程度の距離にあるとはいえ、伯爵領内にある伯爵邸からわざわざ職場である騎士団本部がある城に通っている。
たまに仲間たちと酒を飲みに行ったまま、宿に泊まることはあるが、それは年に数回程度のことである。
「そのまま、寮生活をすれば朝早く起きなくてもいいぞ」
アルフレッドの起床時間に合わせて叩き起こされることに対し、少々不満を抱いていたレオナルドはここぞとばかりに提案した。
「それは嫌だ」
「なぜ?」
「だって、レオ兄さんと遊ぶ時間が減るじゃないか」
アルフレッドは当然のことを言うかのように主張した。
……甘やかしすぎただろうか。
アルフレッドは兄たちによく懐いている。末っ子ということもあり、何をしても可愛いと言われて育ったことも影響をしているのだろう。
「そうか」
……可愛いと甘やかしてしまいたくなるな。
衝動的に頭を撫ぜてしまいたくなるのを堪える。
「兄上もアルに会いたいと思うが」
セドリックの性格を考えると、アルフレッドに会う為に騎士団の寮に乗り込んでいきそうである。
「まあいい。残念ながら、話はここまでだ」
応接室の目の前で足を止める。
「アルは部屋に戻れ」
応接室で待っている人物を威嚇するかのような低い声だった。
「……嫌だ」
アルフレッドはレオナルドの腕を掴んだ。
「彼奴と二人っきりにならないで」
子どものような口調だ。
「お願い。レオ兄さん」
職場である第四騎士団では伯爵家の名に恥ずかしくないほどに堂々と振る舞っているらしいが、家族の前ではいつまでも甘やかされる末っ子のままだ。
そのように振る舞えば、アルフレッドに甘いところがあるレオナルドはすぐに許してしまい、言うことを聞いてくれると知っているからだろう。
ともだちにシェアしよう!