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02-5.
「ジェームズ。扉を開けろ」
「かしこまりました」
レオナルドの指示に従い、ジェームズは扉を開ける。
応接室のソファーに座っているのは一人だけだった。傍に控えている二人の従者に見守られているのは、可愛らしい人形のように飾り付けられたドレスに身を包む少女のように見える青年だった。
……女性名で名乗っても違和感がないな。
相手が男性であると知らなければ、女性として扱ってしまうことだろう。
「あっ! やっと来てくれた!」
わざとらしく口元に手を当てる仕草は可愛らしい。
……常識はないようだな。
レオナルドは眉を潜める。
チューベローズ子爵家は十数年前に爵位を与えられたばかりの新興貴族だ。
それでも、貴族社会を生き残る為には最低限の礼儀作法を教え込んでいると思っていたが、格上の貴族に対する対応とは思えない態度に呆れる。
「クリス!! よりによって、どうして、その服で来たんだよ!」
アルフレッドは感情的になりやすい。
レオナルドが反応をする前に動き、慌てて青年、クリス・チューベローズの元に駆け寄った。
「レオ兄さんの前でそんな恰好をするなんて!」
……脅迫されているのではなかったのか?
会いたくて会いに行っているわけではないと言っていたのは、照れ隠しだったのではないかと思うほどに親しそうに見える。
「えぇー? だって、僕が持っているドレスの中で一番かわいいんだもん」
クリスはアルフレッドに両腕を伸ばす。
それに応えることもせず、アルフレッドは頭を抱えた。
「だから! 可愛い格好で来るなって言ってんだよ!!」
……何を見せられているのだろうか。
アルフレッドに性行為を強要した相手と聞き、子爵家を破産させるような恐喝をするつもりだったレオナルドは首を傾げる。
……二人だけになるのを嫌がったのは嫉妬か?
何度も密会を繰り返している間に情を抱いたのだろうか。
それを兄の前で認めるのが恥ずかしかっただけなのかもしれない。
……それならば、そう言ってくれたら良かったのに。
レオナルドが盛大な勘違いをしているとは知らないアルフレッドは頭を抱えながら、クリスの格好に対する文句を言い続けていた。
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