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02-6.

「もう。アル君、うるさぁい」  クリスはわざとらしい口調で言う。  それから両手を口元に当てながら、レオナルドに視線を向けた。 「僕とお話ししよ?」  ……目的がわかりにくいな。  レオナルドは無言で歩く。  その間、クリスは自分を可愛く見せる仕草を熟知しているかのように可愛らしく振る舞い続けていた。 「レオ兄さんは俺の隣に座ってくれよ」  アルフレッドは頭を抱えるのを止めて、クリスの正面に座る。  そして、その隣にレオナルドに座ってほしいのだと訴えるかのように開けてある隣を何度も叩く。 「……要件は?」  レオナルドはクリスを睨みながら言った。  目つきが悪いレオナルドに対して怯えた素振りもせず、クリスは笑顔のままだ。 「お話をしてみたかっただけだよ」  悪びれた素振りも見せない。 「レオナルドさんって、ジェイド先輩の初恋の人なんだよね?」  クリスの言葉に対して、レオナルドは眉を潜めるが、肯定も否定もしない。  ……初恋?  実際、ジェイドはレオナルドに対して愛を囁き、一目惚れであったことを告げている。先日の態度や手紙の内容を思い返す限りでは、周囲に言いふらしていたとしてもおかしくはない。 「ジェイド先輩の初恋の人にね。僕、ずっと、会ってみたかったの」  ……なぜ、それを婚約していた相手に告げていたんだ?  相手にするつもりはないという宣言のつもりだったのだろうか。  それを懐かしそうに思い返しているクリスは嫉妬しているようには見えない。  まるで面白い思い出だったかのように語っている。 「僕、学院に通っていた時はね。ちょっと有名だったんだよ?」  ……噂にも聞いたことがないが。  新興貴族に纏わる噂は伯爵邸にいても耳にすることがある。  しかし、その噂の中にはチューベローズ子爵家の話題は含まれていなかった。 「学院では一番の人気者だったんだもん」  口元を隠すようにしていた手を動かす。  ゆっくりと右手を頬に当てながら、指で自身の髪を少しだけ弄る。

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