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02-7.
「だからね」
甘えるような声を出す。
「レオナルドさん」
猫が擦り寄ってくるかのような錯覚に陥る。
……なるほど。
レオナルドは表情を一つ変えなかった。
自分よりも僅かに背が高いアルフレッドのことが可愛くて仕方がないと思っているレオナルドにとって、自分自身よりも小柄なクリスに擦り寄られても可愛いとは思えなかった。
……兄上が言っていたのは彼のことだったのか。
十年前からセドリックがレオナルドに言い聞かせてきた言葉を思い出す。
……俺もアルに言い聞かせるべきだった。
女装癖のある人物と遭遇した時の対象方法というずいぶんと偏った知識を教え込もうと努力をしていたセドリックに対し、レオナルドは変なことを心配していると思っていたのだが、実際に遭遇してみるとセドリックの心配が痛いほどよくわかった。
「……ねぇ、僕の話、聞いてる?」
セドリックに言い聞かされたことを思い出している間にクリスがなにか言っていたようだが、聞き逃していたようだ。
「聞いていなかった」
レオナルドは悪びれた表情もせずに返事をした。
「もう!」
クリスは頬を膨らめる。
「仕方がないなぁ。もう一回、言ってあげるね?」
クリスはわざとらしく笑った。
「あああああ! 聞かなくていい!! レオ兄さん、もう行こう!」
「耳元で大声を出すな。うるさい」
「ごめん! でも、クリスの言葉なんか聞かなくていいから!!」
アルフレッドの大声に対して、まるで怯えているかのような仕草をしながらレオナルドの様子を窺ったクリスだったが、レオナルドの関心を得られないと判断をするとすぐに態度を変えた。
「僕と気持ちいいことしよ?」
クリスは堂々と言い切った。
……は?
レオナルドはクリスが口にした言葉の意味を理解できなかった。
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