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02-9.

「アル君ってブラコンだよね」  クリスは摘まんだ菓子を連れてきた従者に渡す。 「大好きなお兄ちゃんと一緒にいたいと思わないの?」  ……脅迫か?  クリスの言葉に対し、レオナルドは警戒する。  ……アルを利用するつもりか。  監視の目がある伯爵邸にて脅迫をしてくるとは考えにくいが、身分差を考えていないかのような態度をとるクリスならばありえなくもないだろう。 「あ! 違う、違う! 勘違いしないでよ!?」  クリスは慌てて訂正する。  警戒をするレオナルドたちの目が怖かったのだろうか。 「僕がレオナルドさんの愛人になれば、三人一緒に暮らせるよって意味だよ!」 「は?」 「もう、アル君。怖い顔をしないでよね!」  クリスは怯えるような仕草の一つもしなかった。 「僕を愛人にしてほしいなぁって頼みに来たの!」  本来の目的を告げることができたと誇らしげな顔をする。  とんでもない発言を繰り返すクリスに対して、レオナルドは呆れるばかりで言葉を紡ぐのを止められなかった。 「ふざけんな!」  しかし、アルフレッドは違った。  クリスの言葉に我慢が出来なかったのだろう。 「いい加減にしてくれよ!!」  アルフレッドは立ち上がってクリスを見下ろす。 「兄さんをお前の遊びに付き合わせるつもりなんかない!!」  機嫌が悪いからだろうか。  いつも以上に感情的な声でアルフレッドは言い切った。  ……愛人。  レオナルドはクリスが口にしていた言葉が引っかかっていた。  ……アルの目の前でそういうことを言うとは。  少なくとも身体の関係があるはずだ。  だからこそ、アルフレッドは怒ったのだろう。 「アル。気分を害したのならば部屋に戻っても大丈夫だよ」 「……兄さん。こいつが何を言ってるのか、理解してる?」 「半分くらいはわかっているつもりだ」  レオナルドの正直な答えに対して、アルフレッドは困った顔をする。

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