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03-5.
「気持ちは嬉しいが、外に出るのは数カ月に一度程度でいい」
「それだけでいいのか?」
「あぁ。室内で過ごす方が好きだからな」
レオナルドは外出する機会を求めていたわけではない。
滅多に外にでない生活に慣れてしまったのも原因の一つではあるが、なによりも、外で過ごす時間をどのように使えばいいのかわからなかった。
「そんなことを言っちまってもいいのかよ」
ジェイドはレオナルドを抱き寄せる。
肩に回された手でさりげなくレオナルドの腕や首元を撫ぜる。
「結婚後は自由がないかもしれないのに」
……なんだろう。
ジェイドの言葉に引っかかりを覚えた。
……前にも同じことを言われたような気がする。
既視感だろうか。
それを思い出そうとするが、遠慮なく触ってくるジェイドの手のせいで集中できない。
「レオナルド」
名を呼ばれてレオナルドはジェイドの顔を見つめる。
それを待っていたと言わんばかりにジェイドはレオナルドの唇に左手の指を押し付ける。
「可愛い顔をしてるとデートの予定を変更しちまうぞ?」
唇の感触を楽しむように指を何度も押し付ける。
文句を言おうとすればジェイドは遠慮なくレオナルドの口の中に手を入れてくるのは、以前、体験した嫌な思い出の一つである。
「文句は言わねえの?」
それを知っているからこそ、ジェイドは好き勝手に振る舞う。
「レオナルドもその気なら変更してもいいぞ」
唇に触れる指を二本に増やす。
口角に指を押し込み、強引に口の中に指を入れようとするが、レオナルドも必死に抵抗をする。
「拒否しないなら宿に行く」
ジェイドは笑顔で告げた。
……不味い。
その言葉の意味を理解する。
三日前の出来事の影響を受け、話を聞いていたジェームズがレオナルドの世間知らずに危機感を抱き、様々な言葉の意図を教え込んだのだ。
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