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03-6.
「いかな――」
素早く否定をして、口を閉じればいい。
レオナルドは意を決したが、言い切る前に指を口の中に突っ込まれた。
「――んぐっ!?」
何がしたいのだろうか。
レオナルドは不快そうな声で嫌がるのをジェイドは真顔で見つめている。
「んんんっ!!」
抗議をしようとするが、指で口の中に入れられている為、言葉にならない。
吐き気を催すほど奥まで指を入れられていないとはいえ、目的がわからない。
「んっ」
レオナルドは背中を窓側にくっつけることで距離を取った。
すると、簡単に口の中から指が抜かれた。
「……なにがしたいんだよ」
唾液を手で拭う。
レオナルドが警戒している様子を見てもジェイドの表情は変わらない。獲物を狙うような眼をしているが、真顔で見つめられるとレオナルドも対応に困ってしまう。
……頭がおかしいんじゃないか。この男。
初対面で求婚をするような男だ。
手紙では比較的まともなやり取りをしていた為、警戒心が薄れていたのだろう。
「意味はないんだが」
ジェイドはレオナルドの肩に乗せているだけだった腕に力を込めて、引き寄せる。タイミングを合わせたかのように馬車が揺れたことにより、レオナルドは抵抗できないままジェイドの胸元に引き寄せられた。
「単純なところも可愛いと思うぞ」
褒められていない。
レオナルドはジェイドの言葉に対して嫌そうな顔をする。
「弟が二人とも単純だと過保護にもなるだろうな」
「……兄上のことを知ってるのか」
思わず、口にしてみたものの、知らないわけがなかった。
……交流があってもおかしくはない。
サザンクロス侯爵家と良好な関係を築きたいと考える貴族は多い。
……変なことを聞いてしまったな。
領土が狭く、目立った特産品がないカルミア伯爵家もその一つだったとしてもおかしくない話だ。
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