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03-8.

 話をしていていた相手は二歳上だった。  来年、入学をするのだという少年と魔法学院に通う日々に思いを馳せていた。 「……ジェイド」  その少年の正体こそが、ジェイドだった。  ……約束をしたのに。  レオナルドが入学をする頃には、ジェイドは最終学年である三年生になる。  先輩後輩とはなるものの、仲良く一緒に過ごす時間もあるだろう。  その日が来ることを楽しみに待っていたのは、レオナルドも同じだった。  ――しかし、未来で果たされるはずだった約束は守られることはなかった。 「待っていてくれたんだよな」  レオナルドは魔法学院に入学をすることはなかった。  入学資格は満たしていた。  魔力を所持しており、貴族としての身分も問題はない。学力も試験を問題なく突破できるだろうと伯爵家で雇っている家庭教師は自慢の教え子だと言っていたくらいだった。  それなのにもかかわらず、レオナルドは入学をすることが許されず、伯爵邸で過ごすように言い付けられた。 「約束を守れなくてごめん」  十年前の出来事を意図的に心の奥深くにしまい込んでしまっていたのだろう。 「……待ってた。約束だったからな」  ジェイドはずっと覚えていたのだろう。  頬に当てられた手が離れようとするのを引き留めることもせず、そのまま、レオナルドの肩に顔を埋める。 「一度だけ手紙をくれただろ」  ジェイドは何を考えているのだろうか。  レオナルドの肩に顔を埋めるような姿勢のまま、話をされてしまうと、レオナルドにはジェイドの顔が見えない。  ただ、何かを企んでいるような表情ではないだろうと推測する。 「ボロボロの酷い手紙だ」  ジェイドの言葉を聞き、レオナルドも心当たりがあったのだろう。 「泣きながら書いたんだろうってことは貰った時からわかっていた」  一度だけしか会ったことがない相手に助けを求めるほどに追い詰められていたのだろう。 「何度も返事を書いたのにな。手紙が来たのはその一通だけだった」  何度も読み返したのだろう。  そのたびに手紙の返事を書いて送り付けた。

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