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03-10.
「……辛かったんだ」
レオナルドの言葉を聞き、ジェイドは顔を上げる。
それからレオナルドを包み込むように優しく抱きしめ、背中を摩る。
「兄上が、何を考えているか、わからなくて」
一度、口に出してしまえば抑えることができない。
頬を涙が伝う。十年という時間をかけて諦めてしまったものを取り戻そうとしているかのようだった。
「俺の言葉は、受け入れてもらえなくて」
レオナルドの訴えに耳を傾けてはくれなかった。
友人たちに会いたいと訴えた言葉はすべて否定されてきた。
「俺の為だって、毎日のように言われ続けて」
そして、すべてはレオナルドを守る為には仕方がないことなのだと言い聞かされ、いつの間にか抵抗をしようとする気力すらなくなっていた。
「俺は、みんなに、会いたかったのに」
両親は頼りにはならなかった。
歳の近い友人たちも伯爵家の方針を変えるようなことはできないだろうと諦めた。手紙は何度も出してはいたが、一度も返事を受け取ることなく疎遠となっていったことが大きな原因だったのだろう。
「もう、会えないんだって、諦めてた」
社交界嫌いの変わり者。人嫌いの伯爵家の次男。
十年前、セドリックが提案した言葉に従う以外の方法はなかった。
「諦めるしかないんだって思ってたのに」
その言葉を待っていたかのように、ジェイドはレオナルドを腕の中から解放する。
「大丈夫だ。もう諦める必要ないだろ?」
抱きしめていた腕をゆっくりと動かし、当時のことを思い出して感傷的になっているレオナルドに寄り添うかのように笑った。
「泣くな。レオナルド」
ジェイドはレオナルドの涙を指で拭う。
「俺が守るから」
ジェイドの言葉に対し、レオナルドは頷いた。
「今日はデートを楽しむんだろ?」
「……うん」
感傷的になったからだろうか。
レオナルドはぼんやりとする頭で返事をした。
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