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03-11.

* * *  アリウム王国の首都イキシアは賑わっている。  カルミア伯爵領の南側に面したイキシアの町は露店が多い。人混みに慣れていないレオナルドは目を見開き、落ち着かない様子で辺りを見渡していた。  ……たくさんいる。  首都は大勢の人が行き来をしていると聞いたことはあった。  ……凄いな。  首都の南側に位置するカルミア伯爵領も商人たちの通り道として栄えた歴史を持つことから、家庭教師から聞かされた様々な話を思い出した。 「今日は祭りの日か?」 「いや。いつも通りの賑わいだ」  レオナルドとジェイドを降ろした馬車は走り去っていった。  人通りの激しい場所にいつまでも停車させておくわけにはいかなかったのだろう。 「祝日はもっと賑やかになる」  ジェイドはレオナルドの手を握る。 「迷子になりそうだからな」 「……子どもじゃない」  落ち着いている大人であると主張するかのようにレオナルドは周囲を見渡すのを止めた。それでも、色々な店が気になるのか、人々の様子が気になるのか、目線だけは動き続けている。 「知ってる。俺が離れたくないんだよ」 「そう、か。それなら、……手を繋いでもいいぞ」 「それはどうも。遠慮なく手を繋がせてもらおう」  ジェイドはレオナルドの言葉を否定しない。  これは自分の我儘なのだと言い聞かせるように言われてしまえば、レオナルドは簡単に受け入れてしまうことをわかっているのだろうか。  ……変な奴。  馬車では情けないところを見せてしまったことを思い出す。  ……良い奴なのか。屑野郎なのか。わからなくなる。  レオナルドに対しては好意的な態度を示すことがほとんどだ。  性的な言動を除けば、信用しても問題はないだとすら思ってしまう。  ……本当にアルを脅迫していたのか?  三日前のアルフレッドの言葉が引っかかる。 「レオナルド。イキシアの名物を知っているか?」  ジェイドに話しかけられて考え事を中断する。

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