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03-13.

「彼奴は優しいからな」  レオナルドは伯爵邸では目にすることがない一口大の果実に視線を向けながら断言する。特定の使用人に対して、私情による評価をするのは貴族としてよくはない行為であることは知っている為、あえて、名は伏せる。 「それにバカな奴だ」  伯爵邸ではレオナルドに関わろうと思う使用人は少ない。  この十年間はそれが当たり前の生活だった。 「俺を放っておけば執事長も夢ではなかっただろうな」  粗雑な字で書かれた果実の説明に目を向ける。  ……美味しいのだろうか。  食事に対する関心はあまりない。  味は感じるものの、最低限以上に摂取しようという気力はなかった。 「二つ。これで足りるか?」 「は、はい」  ジェイドは銅貨を一枚差し出す。  それを受け取った店員は怯えたような表情で慌てて、比較的、綺麗な見た目をしている果実を紙袋の中に積めてジェイドに渡す。 「好きなのか?」 「いや。初めて見たな」 「そうか。迷うことなく買っていたように見えたが?」  レオナルドはジェイドに押し付けられた紙袋を受け取る。  少々、戸惑った目を向けられていることに気付いたのだろうか。ジェイドは気まずそうに視線を逸らした。 「気になったんだろ」  それから歩き始める。  何も言わずについていくレオナルドに対し、ジェイドは困ったような表情を浮かべた。気になっていた様子だった為、買ってみたものの、思っていた反応とは異なっていたのだろう。 「……レオナルドが気になるものを食べさせてやりたかったんだ」  人込みに掻き消されそうな声だった。  ……変な奴だ。  慣れないことをしているのだろう。  行きたいところを問いかけることもせず歩き続ける。  ……兄上よりはまともなところがあるのかもしれない。  レオナルドはジェイドの背を見ながら、そんなことを考えていた。

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